◆ 初心 ◆


駆け出しの冒険者としてグスタベルグで経験を積み

初めてコンシュタット高地に足を踏み入れたあの日。

生まれ育ったバストゥーク周辺とはまるで違う

緑豊かな美しい景色にボクは胸を躍らせて走り回った。



夢中であちこちを散策していると、白い大きな塊が目に入った。

不思議に思って近づいてみると、立派な角を生やした雄羊の横顔。

初めて目にする生き物に驚いて、そーっと離れようとしたが遅かった。

気配に気づいた雄羊に、ボクの体は突き飛ばされて宙を舞う。


視界が反転して青空と太陽に目がくらみ、次の瞬間には真っ暗になった。

だけど痛いという感覚はすぐに薄れて、少しだけ眠っていたような気がする。



次に目が覚めた時には雄羊の姿はなく、見知らぬヒュームの男性が立っていた。

彼はボクの手を引いて立ち上がらせると、肩を叩きながら笑って言った。


「少しくらい無茶をするのも冒険さ」



あれから6年―――




あの人は今、どこに居るんだろう。

名前も知らない、顔もハッキリ覚えていない。




前略、あの時のあの人へ。


ボクは一人前の冒険者になりました。

仲間も沢山増えました。

今のボクなら少しくらい、人の役にもたてるでしょうか?



貴方にもしも再び会えるなら、今度は肩を並べて歩いてみたい。







なんとなく昔を懐かしんで書いたショート。
リアル世界と同じくヴァナにも色々と変化がありますが、その時その時を精一杯楽しんで生きて行きたいですね。





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