◆ 蛹 ◆ No.1


その夜、俺はどうしようもなく疲れていた。

忍者のレベルを上げようと白門で適当なメンバーを見繕い、パーティーを組んでバフラウ段丘のコリブリを狩っていたのが今日の昼。
そのまま8時間ほど経験を積んでから一旦狩りを中断し、地形の奥まった窪地にキャンプを張り簡単な食事を済ませて休息を取った。

空蝉の術を駆使して盾をする忍者という職業は、攻撃間隔の速いコリブリなどを相手にするのはあまり得意ではない。
しかしコリブリ自体の体力は少なく、その他のアタッカーにとっては非常に倒しやすい敵なので、レベル上げの対象としては好まれている。
だから俺もこのバフラウ段丘でコリブリを狩るパーティーを組んだわけなんだが・・・今日の狩りは本気でキツかった。

通常攻撃でもWSでもガンガン空蝉が剥がされて、火力のあるアタッカーにすぐターゲットが移ってしまうのを必死で挑発で取り戻し、体中穴だらけの瀕死な状態になりつつ何とかコイツを倒せるか・・・という頃になると、釣り担当のシーフが嬉々として次のコリブリを連れて来る。
そんなハイペースで被るように敵を連れてこられては、当然空蝉も挑発もすぐには回しきれず、それでもなんとか忍具を投げまくってターゲットをとり、一瞬の休む間も与えられぬまま生殺しのような狩りが延々と続いた。

そうしてボロボロの状態で戦い続けて、日暮れと共に狩りを中断した頃にはもう、俺の体力は限界に来ていた。


疲弊しきった体を地面に投げ出し、木々の隙間から見える細い月を眺めていると、すぐ近くでパーティーメンバーの静かな寝息が聞こえてくる。
あれだけ無茶な狩りをしてたっぷりと経験を稼いだのだから、みんな疲れてよく眠れているのだろう。
俺だって当然疲れている、一番疲れたといっても過言ではないはずだ。
なのに体の疲れとは裏腹に、どうしても眠りに付くことができなかった。
何故なら―――





ギンギンなんだよ・・・・ /sigh





疲れているときほど無闇に勃つこともあるけど、まさにそれ。
無茶苦茶に体は疲れているはずなのに、どうにもこうにも下半身に溜まる熱が治まらない。
これはもう、一発抜いてしまわないことにはどうにも治まりがつかなそうなので、眠っているメンバーに気づかれないようそっと起き出し、キャンプから少し離れた茂みの中に身を潜めた。



周囲に誰もいないことに安心して、下衣の前を寛げ高ぶったモノをスルリと取り出す。
既に完全に勃起しているソレは可哀想なくらいにカチカチで、俺はすぐに右手を添えて乱暴な勢いで扱き始めた。

「・・・・っふ、ぅ・・・」

性急に押し寄せてくる快感に唇を噛み締めながら、とにかく早く処理してしまおうと激しく手を上下に動かして擦り上げる。
あともう少しで絶頂に・・・と、意識がそこに集中しかけたとき、背後からポンと肩を叩かれ心臓が口から飛び出しそうになった。

「こんばんは」
「ぇっ・・・」

驚いて振り向いたすぐ目の前には・・・・・・・たぶん、今回のPTメンバーの一人である赤魔道士が、にっこりと微笑んでこちらを見ていた。
少し長めの黒髪を肩まで垂らし、上品な顔立ちをしたエルヴァーンだったが、昼間は目深に被ったシャポーのせいで顔の造りまではあまり見えていなかった。

「お取り込み中だったかな?」
「あっ・・・これは、その・・・」

しばらく赤魔道士の顔をマジマジと見てしまったが、すぐに自分の状況を思い出して慌てて視線を逸らせて背中を向ける。
晒した前を隠すよう膝を抱えた姿勢で丸くなり、恥ずかしさと気まずさで冷や汗をかきながら後ろのエルヴァーンの反応を緊張して待っていた。

「今日の狩りはお疲れ様でした」
「ぇ・・・ども、お疲れ様です・・・」
「ずっとあの勢いで戦い続けていたから、疲れたでしょう」
「えぇ・・・まぁ・・・」

まるで何も気づかなかったかのように、平然と普通の会話を続ける赤魔道士に戸惑いながらも、とりあえず俯いたまま無難な返事を返す。

「忍者さんが盾するには、こっちのエリアの敵は不向きですよね」
「そ、そうです、ね・・・」
「私も出来る限りのフォローをと思っているんですが、回復くらいしか出来ずにすみません」
「いえ・・・沢山ケアルして頂けてるおかげで、なんとか倒れずに済んでますから・・・」

せっかく気遣ってくれている労いの言葉だが、ぶっちゃけ今はどうでもいいから早くキャンプの方へ戻ってくれと心の中で強く願う。
しかしそんな俺の心境を知ってか知らずか、エルヴァーンの赤魔道士は中々俺の後ろの位置から立ち去ろうとはしてくれなかった。

「あんまり辛いようでしたら、予定より早めに切り上げても私は構いませんよ」
「いや・・・狩りの予定は明日の夕暮れまでってことで伝えてあるんで、ダイジョブです」
「そうですか。でもあまり無理をなさらないように」
「お気遣い、感謝します」
「じゃあ後1日、頑張ってくださいね」
「ありがとう」

やっと会話の終わりが見えてきて、これでキャンプへ帰ってくれるだろうとホッと息を吐きかけた時、急に赤魔道士が後ろから覆い被さってきた。


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