◆ 赤の軌跡 ◆ Vol.2-4


「っン・・・く、ぅ・・・」

力強い律動で突き上げられ、喉の奥からくぐもった呻きが零れだす。
普段あまり耳にすることのない自分の声は、どこか他人事のようにも聞こえてきて、だんだんと現実味が薄れていった。

「・・・っは、ぁ・・・」
「随分と良さそうだな」
「ぅ・・・ァ・・・」
「エロい顔してハァハァしちゃって、レイちゃんも淫乱だねぇ」

身体にうける陵辱だけでなく、言葉でもなじられ悔しさに涙が滲む。

「なぁ、いい加減俺にも代われよ」
「待てって、そんなガッツクなよ」
「お前遅いんだよなー」
「早いよかいいだろ」
「ったく、待たされる方の身にもなれって」
「わぁったよ、今出すから」

男はそう言うと、急に速度を上げて激しく中を突き回したあと、低く短い声を上げて奥に欲を吐き出した。
ズルリと熱い塊が俺の中から抜け出していくと、すぐに別の男が俺の身体を裏返しにして、膝を立たせるような姿勢で後ろから押し入ってくる。

「ぅう、くっ・・・」
「おーぉー、すげぇ絞まる」

後ろから俺を犯す男は上機嫌で腰を打ち付けてきて、ガクガクと揺らされる体はもう自分の力では支えていられなかった。

「あ〜俺も待ちきれねぇ」
「そっち咥えさせとけよ」
「あぁ、そうするわ」

順番待ちをさせられていた男が俺の目の前で性器を取り出し、片手で俺の顎を持ち上げると無理やり口に押し込んでくる。 捻じ込まれた硬い肉は好き勝手に口内を暴れ周り、微かな酸味と独特な男臭さを伴って味覚と嗅覚からも俺を追い詰める。

「ん、ぐぅ・・・」
「ほら、ちゃんと舌使えって」
「っふ、ぅ・・・は・・・」
「そうそう、レイちゃんのお口は喋る為じゃなくて、しゃぶる為にあるんだもんな〜?」
「・・・んっ、ン・・・ぅ」
「見ろよ、すげーエロい顔してる」

前からも後ろからも乱暴に突き入れられて、激しく粘膜を犯す行為に強い吐き気がこみ上げてくる。
辛くて苦しくて仕方が無いのに、下半身に溜まる熱が自分自身さえも裏切っているようで、やり場の無い悔しさに涙が溢れた。

いつになったら解放されるのか・・・
終わりの見えない責め苦にだんだんと意識が遠くなり、自制できなくなった身体はビクビクと反応を繰り返す。
次々と男達が精を吐き出し、何度も入れ替わりながら拷問が繰り返される中、俺はただ擦れた声を上げながら人形のように揺さぶられ続けるしかなかった。





・・・・・目が覚めると、薄暗かった。
行為の最中に気を失って、そのまま日が暮れてしまったらしい。
首だけを動かして部屋の様子を眺めてみると、もうあの三人の姿はなかった。

モーグリが点けてくれたのか、ナイトテーブルの上の小さなランプだけが室内をボンヤリと照らしていて、床に散れていたはずの赤いアーティファクトは椅子の背もたれに掛けてあった。
痛む体に鞭打って無理やりベッドから起き上がり、ワーロックタバードだけを軽く羽織ってキッチンへと足を向ける。 キッチンでは食材庫の横でフワフワと所在無さげに浮いていたモーグリが、俺の顔を見るや否や弾かれたように飛んできた。

「ご、ご主人様!大丈夫クポ!?何か欲しいクポッ!?」

慌てた様子のモーグリに苦笑いを返しながら、飲み物を飲むジェスチャーを示してみせる。
するとモーグリはすぐに蒸留水をグラスに注ぎ、両手で俺に差し出してくれた。
その蒸留水を一気に飲み干し、空いたグラスをモーグリに手渡す。

「お風呂を沸かしてあるクポ、ゆっくり浸かって休むといいクポ」

モーグリの気遣いに感謝して、《大丈夫だよ》と笑顔で伝えながらバスルームのドアを開けると、フワリと広がる暖かい湯気が心と身体に沁みこんで来る。
肩にかけたタバードを脱衣所に残し、頭から熱いシャワーの湯を浴びていると目の奥からもジンと熱がこみ上げて来る。
思い切り声をあげて泣く事もできない俺は、悔しさと悲しさを拳に乗せて、浴室の壁を何度も叩いた。


to be continued

*あとがき*
前作はエド視点で語りましたが、今回はレイ視点に変わっています。
この先、二人の視点を交互に入れ替えながら物語が進んでいくと思います。(ちゃんと連載が続けば・・・)

レイは自分の障害を十分に理解しつつ、それでも人としての強いプライドを持っているタイプです。
口が利けない事を理由に、他人に頼ったり、哀れまれたり、迷惑をかける事を苦痛に感じ、常に一人で行動しています。
しかし社会的弱者として他者から強い圧力を掛けられれば、見苦しく抗う事もせずに大人しく従います。
良くも悪くも、「諦める」という方向に達観しているのかもしれません。
2009/08/05


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